台北駐日経済文化代表処台湾文化センターによる働きかけで、日本の第35回東京国際映画祭(10/24~11/2)と第25回東京フィルメックス(10/29~11/6)が初めて協力、「蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督デビュー30周年記念特集」として同監督の作品を上映している。東京フィルメックスはアジアを中心とした独創的な映画を紹介する国際映画祭。
台湾文化センターは27日、米国から日本を訪れた蔡監督、俳優の李康生(リー・カンション)さん、Anong Houngheuangsyさん、王雲霖プロデューサーらを招いて記者交流会を行った。交流会では東京国際映画祭の石坂健治シニア・プログラマー(同氏はアジア映画が専門)が司会を務め、謝長廷駐日代表、東京国際映画祭の市山尚三プログラミング・ディレクター、東京フィルメックスの神谷直希プログラム・ディレクターらが出席した。
蔡明亮監督を「よく知っている友人」とする謝駐日代表は、自身が高雄市長を務めていた時に設置した「映画奨励金」で、初めて1,000万台湾元(約4,500万日本円)の補助を行ったのが蔡監督が高雄市をロケ地に撮影した『天邊一朵雲』(日本でのタイトルは『西瓜』)で、自分がこれほど多額の補助金を提供したのは後にも先にもこの時だけだと説明した。謝代表はまた、同作品がベルリン国際映画祭で銀熊賞(芸術貢献賞)を獲得したことに触れ、高雄市と台湾の映画産業を大いに鼓舞することになったほか、台湾が十分に自由で民主的であるからこそ多様性と包摂性を持つ芸術作品を生み出せることを全世界に知らしめたと評価、これからも蔡監督がけん引役となり、台湾映画が引き続き世界で評価されるよう導いてほしいと期待した。
蔡監督も「謝駐日代表との縁は深い」とし、デビュー当時、商業映画とは異なる自由度の高い作品を目指したが台湾の市場で頭角を現すのは難かく、最初の長編映画『青少年哪吒』(日本でのタイトルは『青春神話』)が公開されたときには8本の作品が同時に公開されるなど厳しい環境だったと明かした。蔡監督はしかし、台湾では政府が海外で受賞した作品に奨励金を与える制度があったため自分は映画を撮り続けることが出来、この職業でこれまで暮らせていると説明、今回東京国際映画祭と東京フィルメックスが協力して「デビュー30周年記念特集」を行ってくれることに非常に感動しているとし、台湾と日本の映画ファンの自身の作品に対する支持に感謝した。
今回の「30周年記念特集」では東京国際映画祭と東京フィルメックスで作品上映とQ&Aが行われているほか、台湾文化センターもこれに合わせて蔡監督の作品ポスター展を開催(24日から来年1月末まで)、デビュー30年における蔡監督の代表的な11作品を厳選してそのポスターに説明を添えて展示している。
蔡監督は27日、東京国際映画祭で『青少年哪吒』と『不散』(日本でのタイトルは『楽日』)の上映にあたってQ&Aと舞台挨拶に出席、会場はほぼ満席となった。ある観客は、蔡監督の作品は自分たちの世代の青春期における焦燥感を慰めてくれたと涙ながらに発言、それを聞いた観客の多くが涙する場面もあったという。